「ねえ、これなに」
 棚の掃除をしていたら見つけてしまったやや古ぼけた手紙。封をしてあるが、表にも裏にも名は書かれていない。
 むくむくと沸き起こる何かを飲み下しながらシュトレンに問いかければ、目を丸くして手紙を凝視していた。
「どこでそれを」
「掃除してて、持ち上げた本の隙間から落ちてきた」
「なるほど」
 じっと睨みつけるように見上げれば、困ったなと彼は頭をかいた。
「開けていいぞ」
「え?」
 戸惑いながらも封を開けて中を見る。途端、ぼっと顔に熱が集まった。キュヘレは慌てて彼を見ると、照れくさそうに笑っていた。
「懐かしいな。三年前に書いたお前へのラブレター」
 結局渡せなかったけどな、と困ったように呟いた。

『読まれなかった手紙』紙面デザイン

(『300字SSポストカードラリー企画』第2回参加作品)

パンと少女と恋綴り』小噺。時系列は本編後、ふたりが同じ家に暮らしはじめたころ。
掃除中に古い手紙を見つける→宛先不明→もしかして誰か(恋人)への手紙…?→どういうことよ!という感じの流れでキュヘレが嫉妬するSSでした。実は本編でシュトレンが手紙を書くシーンがあったのですが、結局入れられなかったのでここで。

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