数千年前、世界戦争が勃発した。
何がきっかけだったのか、それさえも解らないまま起こったものは止まることを知らない。
幾つもの国が抗うこともできずに沈み、滅んだ。
しかし、戦争はある出来事を境に歴史の闇に堕ちた。
否、歴史そのものが闇へと堕ちた。
何が起こったのか、何が原因だったのか……現在の技術では到底理解できるものではない。
世界は廃頽した。
世界そのものを喰い尽くす原因不明の“其れ”の影響は、甚大であった。
人間は倒れ伏し、木々は汚染され腐敗し、海は枯渇し干上がり、空は常に赤褐色で灼熱の光を放つ。
それでも人間は、惨めであろうとも生きることをやめなかった。
汚染された大地に人間は住めない。生き残った人間たちは生きる為に大地の上に〈大地〉を造った。
そして〈大地〉の上に新たな〈街〉を造り上げる。
僅かな緑を育み、僅かに残る水を掘り起こし、失われてしまった技術の塊を動かし、いつ訪れるとも解らない世界の終焉に向けて生きていく。
〈大地〉の上にある〈街〉は円頂型の上下二段構造になっている。
上を上層地区、下を下層地区と最下層地区と呼び、地区の中にフィオ、エオルー、ウル、ニイド、ハガル区までの五つの区切りがあるが、特に仕切りがあるというわけでもない。
上層地区 ― フェオ区、エオルー区。〈街〉を治める数人の幹部、一般庶民が暮らしている。
下層地区 ― ウル区、ニイド区。貧困層、スラムとなっている。
最下層地区 ― ハガル区。下層地区よりも治安の悪いスラム街だったが、現在は魔物の巣窟となっている。
上と下の地区を行き来するのにはエレベーターを使用する。
しかし、パスワードが必要になってくるので使える人は殆どいない。
最下層地区であるハガル区は、数年前に外壁が崩れて魔物が押し寄せてきた際に潰れてしまった。
現在は魔物の巣窟となっていて危険区域に指定されている。
下層地区もそろそろ危ないのだが、上層地区に上がる術がないので最下層地区とを遮る壁を補強することで魔物の侵入を防いでいる。
下層地区には魔物を討伐する組織〈オプファー〉がある。
リーダーを中心にウル区、ニイド区の治安を維持している。時々壁を越えてくる魔物や、巣窟となっている最下層地区に赴いて魔物を討伐することが主な仕事。