300字SS『今はまだ遠い故郷への帰り道』

(別所に上げていたものをこちらに再録しました。過去作です。)

創作作品「〈渡り鳥〉」本編後の話につき未読の方は重要な箇所のネタバレがありますので要注意です。

 今日はもう先に進むのは諦めた方がいいだろう。
 クロスはそう結論付けて、後ろを歩くポエに向き直った。
「ここで休憩にしよう」
「……はい」
「ポエは頑張りすぎるからな、ちゃんと休むぞ?」
「それを言うならクロスさんもですよ」
「言うようになったなぁ」
 翼を無くしてから随分と遠いところまで歩いてきた。ただの『人』として生きていくことになってしまったふたりには、これまでの常識も知識も、全てが足りなかった。
 ――それでも、世界は厳しくも優しかった。
 本当に故郷へ帰れるのかと、今でも不安がある。
 それでも、あの情の深い神様が願ってくれた思いを胸に、そして自分自身の願いのために、今はただ、歩き続けるしかない。


第45回Twitter300字SS参加作品。お題『帰る』。
H30.8.4 執筆
改行除き292字。